2025/02/18
法務情報
育児・介護休業法改正ポイント【2025年4月1日施行】(弁護士 橘 里香)

1.【2025年】育児介護休業法が改正されます!
昨年5月に改正法が国会で可決された育児介護休業法ですが、2025年4月1日からと2025年10月1日から2段階に分けて新法が施行されます。
今回は、2025年4月1日施行の改正点を見直しておきましょう。
2.仕事と育児の両立を可能とするための改正
⑴ 子の看護休暇の見直し
小学校3年生修了(9歳に達する日以後最初の3月31日)までの子を養育する労働者は、年間5日(子が2人以上の場合は10日)子の看護等休暇を取得できるようになりました。
改正前は、子の看護休暇は、小学校就学前の子どもについてだけでしたが、対象となる子の範囲が小学校3年生修了までと拡大されました。
また、取得事由についても、従前は①病気・けが、②予防接種・健康診断だけであったところ、③感染症に伴う学級閉鎖等、④入園(入学)式・卒園式が追加されました。
これに伴い名称も子の看護休暇から子の看護等休暇に変更になります。
また、従前は労使協定を締結すれば①週の所定労働日数が2日以下の労働者と②継続雇用期間6カ月未満の労働者は除外できるとされていましたが、改正で②は撤廃されました。
⑵ 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
子が小学校就学前まで、(事業の正常な運営を妨げる場合を除き)残業免除を請求できるようになります。
従前、残業免除の請求は3歳未満の子を養育する労働者についてのみ認められていましたが、対象が拡大され、小学校就学前まで残業免除を求められるようになります。
⑶ 育児用テレワーク導入の努力義務化
3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが事業主に努力義務化されます。
⑷ 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置メニュー追加
3歳に満たない子を養育する労働者に関し、育児短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置の選択肢に「テレワーク」が追加されました。
会社は、3歳未満の子を養育する労働者で育児休業していない労働者が希望した場合には、育児のための所定労働時間の短縮措置を講じなければならないとされています。
ただし、業務の性質・実施体制に照らして短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者は、労使協定締結の上、代替措置を講ずることでも良いとし、これまでは代替措置として①育児休業に関する制度に準ずる措置、②フレックスタイム制度、③始業・就業時刻の繰り上げ、繰り下げ(時差出勤)、④事業所内保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与が定められていましたが、これに新たに⑤テレワークが追加されました。
⑸ 育児休業等の取得状況の公表義務の適用拡大
常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、毎年1回、男性の育児休業等の取得状況を公表しなければなりません。
従前は、1,001人以上の事業主でしたが、301人以上と適用範囲が拡大されました。
3.仕事と介護との両立支援強化
⑴ 個別周知・意向確認
介護に直面した旨申し出た労働者に対して、事業主は、介護休業制度及び介護両立支援制度等の周知し、利用の意向確認を個別に行わなければなりません。
⑵ 早期情報提供義務
事業主は、制度活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、介護に直面する前の早い段階(労働者が40歳に達する日の属する年度、または、40歳に達する日の翌日から1年間)で、介護休業および介護両立支援制度について労働者へ情報提供しなければなりません。
⑶ 雇用環境整備等の措置の義務化
従業員が介護両立支援制度の利用を申出しやすいように、①研修の実施、②相談体制の整備(相談窓口設置)、③休業制度利用についての事例の収集・提供、④制度利用促進に関する自社方針の周知、のいずれかの措置を実施する必要があります。
⑷ テレワーク措置の努力義務化
介護を行う労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが事業主に努力義務化されます。
⑸ 介護休暇を取得できる労働者の要件を緩和
従前、労使協定を締結すれば、①週の所定労働日数が2日以下の労働者と②継続雇用期間6カ月未満の労働者は除外できるとされていましたが、改正で②は撤廃されました。
4.次世代育成支援対策推進法の改正
⑴ 「次世代育成支援対策推進法」に基づく行動計画策定時の状況把握及び数値目標の設定の義務付け
次世代育成支援対策推進法で、企業は労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」の策定と届出が(常時雇用労働者101人以上の事業主については)義務または(常時雇用労働者100人以下の事業主については)努力義務とされていましたが、新たに数値目標の設定が(常時雇用労働者101人以上の事業主については)義務付け、(常時雇用労働者100人以下の事業主については)努力義務とされます。
⑵ 有効期限の延長
改正前は、次世代育成支援対策推進法は2025年3月31日限りとされていましたが、改正で2035年3月31日までと10年間の延長がされました。
労働者にとっては、大きな影響のある変更を含みます。
改めて、改正内容を見直し、きちんと対策がとれているか確認をしましょう。
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