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法務情報

2011/10/18

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【法律相談】震災で行方不明の親族の財産管理

新潟事務所弁護士角家理佳震災

Q このたびの震災で,親族の1人が行方不明で未だに安否も分からないままです。その人の財産の管理はどうしたらよいでしょうか。

 

A.行方不明の方に,もともと財産管理人や後見人等がついていた場合には,引き続きその人が財産管理をすることになります。 
 しかし,そのようなケースは,非常に少ないと思われます。 

 
 そこで,行方不明者が成人の場合には,財産管理人の選任を申し立てることになります。 
 申立てがなされると,家庭裁判所が財産管理の必要があるか否かを調査し,必要性ありと判断すれば,財産管理人が選任されます。そして,以後その人が行方不明の方が戻るまでの間,財産を管理することになります。
 ただし,この申立ては,利害関係人(推定相続人や債権者等)と検察官しかできません。
 また,この制度は,現状をそのまま維持・保全することを目的としていますので,積極的に財産を処分するようなことは基本的には出来ません。どうしても必要な場合には,裁判所の許可を得てすることになります。

 
 しかし,今回のような甚大な被害の場合,行方不明者の生還の可能性が低いという現実を受け入れ,相続を開始させる必要に迫られることもあるでしょう。しかし,その場合も,今のままでは相続を開始することはできません。

 
 そのような場合に利用できる制度の一つとして,認定死亡制度があります。
 認定死亡制度とは,震災,海難などの事変に遭遇し,死亡したことは確実だけれども遺体が発見されない等の事情により死亡が確認できない場合に,取調べをした官公署(警察署長等)が死亡地の市町村長へ死亡報告をすることにより,本人の戸籍簿に死亡の記載をする戸籍法上の制度をいいます。
 この記載がなされると,記載日に死亡したものとされ,相続が開始します。

 
 次に,利用できる制度として,失踪宣告があります。
 失踪宣告には,普通失踪と危難失踪の2つがありますが,震災の場合には後者になります。
 これは,震災,津波等の危難に遭遇し,その後1年間生死不明の状態が続いた時に,利害関係人の請求で,家庭裁判所が失踪の宣告をするもので,危難の去った時に死亡したものと見做されることになります。
 したがって,失踪宣告がなされると,危難が去った時に相続が開始していたことになります。
 失踪宣告の申立ては,利害関係人が,行方不明者の住所地の家庭裁判所にします。
 申立てを受けた家庭裁判所は,調査の後,公示催告(不在者は生存の届出をするように,不在者の生存を知っている人はその届出をするように,官報等で催告すること)をし,期間内に届出がなかった場合に,失踪の宣告をします。
 今回の震災でも,失踪宣告を申し立てなければ相続の開始しないケースが多数あると思われます。
 普通失踪では7年間の生死不明が要件となっていますから,危難失踪はそれに比べるとかなり期間が短縮されていますが,それでも,逼迫した経済状況下にあり,行方不明者の死亡に基づく給付等を必要とする方々にとっては,宣告までの時間は長いものです。

 
 そこで,厚生労働省は,5月2日に,「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」を公布,同日施行し,遺族基礎年金など死亡を支給事由とする給付を速やかに支給するために,行方不明になった方を死亡したと推定するまでの期間を,現行の災害発生後1年以降から3か月に短縮する措置等を実施しました。

 これにより,6月11日以降,遺族が申請をすれば遺族年金などを受け取れるようなるとのことです(ただし,失踪宣告の期間が短縮されるわけではなく,相続は宣告まで開始されませんので,注意が必要です)。

 
 大切な人の死亡という事実を前提とする手続きを選択しなければならない悲しみは察するに余りありますが,災害時には救済のために,このような様々な特別措置が用意されるということだけでも,是非覚えておいていただければと思います。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 角家 理佳◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年5月31日号(vol.79)>

 

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