2012/07/31
法務情報
【法律相談】ペットにまつわる法律問題
Q1.私は、犬を飼っています。散歩中に、私の犬がお隣のお子さんに突然吠えたところ、お隣のお子さんはびっくりして転んだ拍子に地面に頭を強く打ってケガをしてしまいました。この場合、治療費等の損害を賠償しなければならないのでしょうか?
A1.民法上、飼い主は、ペットが「他人に加えた損害を賠償する義務を負う」とされています。動物の行動とお子さんが転んで頭を打ったこととの間に「相当因果関係」があれば、飼い主さんは、損害を賠償する義務を負うことになります。
本件の場合、犬の種類や大きさ、お隣のお子さんの年齢、犬が吠えたときの状況等から、吠えられてびっくりして転んでしまうことが社会通念からみて相当と認められれば、損害賠償義務を負うことになるでしょう。
Q2 先日、私が10年間もだいじにかわいがっていた愛猫が、交通事故で亡くなってしまいました。加害者の方が賠償を申し出てくれていますが、提示された金額に納得できません。このような場合、どのくらいの金額が妥当なのでしょうか?
A2.民法には、有体物(「不動産」と「動産」)について規定がありますが、動物については規定がありません。法律的には、動物は「動産」と解釈されます。
一般的に、物が壊された場合の損害賠償については、時価を賠償すれば足りると考えられます。もっとも、近年は、飼い主に生じた精神的損害の賠償(慰謝料)を認める裁判例もみられます。飼い主とペットの関係、事故態様、加害者の態度等を総合的に考慮した結果、被害者の特別の愛情や精神的平穏を強く害する特段の事情がある場合には、慰謝料も認められています。
なお、今話題になっている福島第一原発事故に関する損害賠償について、原子力損害賠償紛争解決センターは、ペットの死亡慰謝料(一人あたり5万円)を認める仲介案を示しています。
Q3.私は今年の春で80歳を迎えますが、夫は3年前に他界し、子どももいません。家族と呼べるのは愛犬のポチだけです。私が先に亡くなってしまったら、ポチがかわいそうなので、ポチに私の遺産を残してあげたいと考えています。このようなことは可能なのでしょうか?
A3.民法は、権利の主体としては「人」しか規定していません。つまり、犬には所有権が認められません(犬小屋も首輪もドッグフードも、所有者は飼い主なのです)。
そうすると、犬に遺産を残すことはできません。もっとも、あまり現実的ではありませんが、「ポチの面倒を見ること」を目的として財団を設立することは可能です。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 五十嵐 亮◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年3月15日号(vol.98)>
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