INFORMATION

法務情報

2011/03/08

法務情報

【法律相談】事業承継と遺言書

弁護士今井誠新潟事務所遺言・相続

 

 

Q.私は将来、父の会社を継ぐため、3年前に他社勤務を辞めて当社に入社しました。 

当社は建設会社を中核にいくつかのグループ会社をもっています。私の父が創業者でグループ会社の株の過半数を父が保有しています。

私には弟と妹がいますが、父は私を後継者に指名し、グループ会社の株の全部と事業用資産、それに両親が住む土地建物を私に継がせるために遺言書を書くといっていますが、そのような遺言は有効(有益)でしょうか。

 

 

A.遺言が有効かどうかは一概に判断できません。
  何故かというと、遺言したからといって遺言者の期待どおりに相続手続や事業継承がうまくいくとは限らないからです。
  父親が長男への事業継承にこだわり、財産の大半を長男に相続させると遺言書に書いても、母親と他の相続人(弟や妹)がそれに反発すると逆効果になってしまうこともあります。
  親子関係や兄弟関係に特別問題のない場合には、父親の考えを子供や奥さんにきちんと伝え、誤解のないようにしておくことが大切です。
  後継者と目されている長男が、他の法定相続人に内密にして自分に有利な内容の遺言書を書かせたと誤解されて思わぬ紛争(相続争い)が起きてしまうことが少なくありません。
 事業継承をともなう相続手続は、法定相続人の間だけでなく、他の株主、役員、従業員、銀行、取引先などとの間でも利害対立する面があり、それだけに各方面への配慮が必要です。

   親子関係や兄弟関係に多少とも問題があり、会社経営をめぐって役員や株主間に対立のあるようなケースでは、父親が健在のうちに顧問弁護士とよく相談して対策を練ることが重要です。そうした対策の一環として遺言を活用することは有効です。
 ある程度の紛争を想定して、その予防策や紛争対策を事前に検討しておくことは、責任のある経営者のとるべき道として当然のことだからです。
 遺言を活用した事業継承対策や相続対策は、遺言書が無効であっては何の意味もありません。
 遺言の方式(遺言書の作成方式)には、「普通方式」(自筆証書・公正証書・秘密証書の各方式)と「特別方式」(危急時方式など)があり、それぞれ厳格な要件(有効要件)が定められています。自筆証書遺言の場合には、方式違反で無効となる場合が少なくないので注意が必要です。事前に顧問弁護士とよく相談して、手続を誤らないようにしてください。


                                  

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2007年3月号(vol.14)>

月間アーカイブ