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法務情報

2011/04/19

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【法務情報】セクハラは更に進化する?

新潟事務所労働弁護士和田光弘

   星の数は数々あれど 月とみるのは主(ぬし)ひとり
 

 これは、江戸時代に謡われた小唄の一節(?)のようです。意味するところは、「男はたくさん言い寄ってくるけれど、私が本当に好きなのはあなただけ」ということでして、実に色っぽい内容です。私は、この歌をセクハラ解説セミナーでいつも紹介しています。なぜでしょうか?
 

 経営者(及び管理職)の人たちはこう言います。「わからんなぁセクハラは。俺が言うとセクハラで、若い奴が言ってもセクハラじゃないなんて」と。でも、それで良いのです。要するに、「性的自由」というのは、突き詰めれば「性的自己決定権」でして、解りやすく言うと「好き嫌いの自由」です。

 
 「いやぁ、今日のスカートは目の保養になる」「おしりのラインがきれいだ」などと言ったりしますと、「社長、やめて下さい」と不快感を示す女性が、「そのスカートは身体にフィットして、君によく似合う」と言う若い同僚社員には「そう?そんなでもないと思うけど」とまんざらでもない様子を示すのは、この「好き嫌いの自由」があるからです。経営者の方々はこの違いをよくよく理解しなければなりません。

 
 しかも、この4月(※2007年)からは男女雇用機会均等の改正により、「男性に対するセクハラ」も同じように禁止されます。例えば、「キャバクラぐらい行けなくてどうする」、「お前も男なら女を知りたくないのか」、「まだネンネだからな」などと言う男性から男性に対する「からかい言葉」も、相手によってはセクハラとなるでしょう。

 
 もし、こうした実状について改善が必要となれば、「雇用管理上の措置義務」が必要となり、是正勧告に応じなければ「企業名の公表」も新たに取り入れられました。お気をつけ下さい。

 
 男女雇用機会均等法の改正では、その他に、妊娠・出産を理由とする解雇が禁止されていたのに加えて、同じ理由で非正規社員に対する雇止めや退職勧奨、パート職への変更など全ての不利益取扱いが禁止されますし、産後1年以内の解雇も原則無効となります。また、いわゆる「間接差別」も禁止されます。これは、性別と一見関係ないように見えても、実は片方の性に不利益を与える措置で合理性がないものを指しますので、よくある「コース別人事」など問題が発生しうる場合があります。

 
 いずれにしても、「雇用管理」は企業で働く労働者の人権を守ることが重要です。「労働者は人間らしく公正に扱われ、尊厳ある働き方が保障される」ということが根本です。「企業はひと」という中小企業の経営者が9割ですから、どうか、働く人々を大事にして下さい。私達の法律事務所も小とはいえ、職場を形成していますので、私自身、経営に関与する立場として、よくよく気をつけたいと思います。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 和田 光弘◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2007年5月号(vol.16)>

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