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法務情報

2015/09/15

法務情報

【法務情報】入所者3人転落死の老人ホーム 虐待も起きていた!

弁護士海津諭

Q

川崎市の老人ホームで、入所者3人が相次いで個室のベランダから転落死した事件
昨年わずか2か月の間に87歳男性、86歳女性、96歳女性が、朝方施設のベランダから転落し、死亡。

また調べると施設では虐待が発覚、家族がカメラを設置し、4人の男性職員が代わる代わる暴行を加える様子が記録されていたという。

「死ね」などの暴言、ベッドに放り投げる、ナースコールを外す、入所者の食事を勝手に食べるなど。
他にも、男性職員が入所者の現金数万円を盗んだ疑いで逮捕され、懲戒解雇になっていたことも判明した。

さらに、別の男性入所者が今年3月に入浴中に死亡していたことも分かった。
市は「転落死と入浴中の死亡に関連はないと考えている」としたが…。

入所者の家族からの訴えを受けて川崎市は6月と7月に監査を行っている。
家族は今後、刑事告訴することも検討しているという。
こうした場合はどうのように訴えていけば良いのか。

 

 

A

高齢者である入所者が虐待を受けてしまった場合、その入所者は、虐待を行った従業員と施設経営者の両方に対して、損害(例えば、治療費、慰謝料、盗まれた現金など)の賠償を求めることができます。

もしも、入所者が認知症などのためご自身で請求をできない場合は、成年後見人が代わりとなって、損害賠償請求を行うことができます。

その他の対応として、虐待を受けた入所者やその家族としては、市町村に対して、虐待の事実をすぐに通報すべきです。
通報を受けた市町村は、事実確認を行った上で、都道府県と連携しながら施設への改善指導などを行っていきます。

また、虐待行為の内容によっては、暴行罪、傷害罪、横領罪など、刑法上の犯罪が成立する場合もあります。そこで、虐待を受けた入所者やその家族としては、警察署に相談して、被害の届出や告訴を行うこともできます。

大まかな対応方法は以上のとおりです。なお、介護施設は高齢者にとって安心して暮らせる場所であるべきですが、平成25年度の統計によれば、施設による高齢者虐待の事実は全国で221件も確認されています。より良い世の中をつくるためにも、虐待を見つけた場合は、すぐに弁護士に相談しながらきちんと対応していくことをお勧めします。

 

※Komachi Web (こまちウェブ・新潟県の総合エリアガイド)にも掲載されております。

 

【弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭】

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