2011/04/05
法務情報
【法務情報】非嫡出子の相続分が変わる?~遺産分割審判事件,最高裁大法廷に回付~
1 嫡出子・非嫡出子とは
嫡出子(ちゃくしゅつし)とは,婚姻関係にある男女から生まれた子のことをいいます。
これに対して,嫡出子でない子のことを非嫡出子(ひちゃくしゅつし)といいます。
(なお,婚姻関係外で生まれた子供であっても,例えばその後に父が認知を行いかつ父母が婚姻すれば,嫡出子の身分を取得します。また,養子縁組における養子は嫡出子の身分を取得します。)
2 非嫡出子についての現行民法の定め‐相続における格差
民法900条4号は,非嫡出子の法定相続分を,嫡出子の法定相続分の2分の1であると定めています。このように,非嫡出子は嫡出子と比較して,法定相続分について格差を設けられています。
3 相続格差が合憲とされてきたこと
上記の相続格差を定める民法の規定については,これまで裁判所において何度も,法の下の平等(憲法14条1項)に反し違憲であるかどうかが争われてきました。
しかしながら,これまでの最高裁の判断は,当該規定の立法理由(法律婚の尊重と非嫡出子の保護との調整)が合理的であること等を理由として,合憲であるとの判断が続いていました。近年の最高裁でも,平成21年9月30日の最高裁第2小法廷決定において,合憲判断がなされています(ただし,5人の裁判官のうち,違憲とする反対意見が1人,少なくとも現時点では違憲の疑いが極めて強いとして法改正を促す補足意見が1人でした)。
4 大法廷回付がなされたこと‐違憲判断の可能性
平成22年7月7日,上記の最高裁判断の流れに変化の可能性が生じました。相続格差の合憲性が争われている遺産分割審判事件(特別抗告審)について,事件が最高裁第3小法廷から大法廷に回付され,大法廷で審理が行われることになったのです。
一般に,最高裁では,通常は5人の裁判官で組織される小法廷で審理が行われます。しかしながら,新たな憲法判断が行われる場合,違憲判断が行われる場合,及び過去の最高裁判例を変更する場合には,15人の最高裁裁判官全員で組織される大法廷で審理が行われなければなりません(裁判所法10条)。
今回,第3小法廷が大法廷に事件を回付したことは,判例変更による違憲決定があり得ることを踏まえて,小法廷限りではなく大法廷での慎重な審理が選択されたことを示すと考えられます。
5 おわりに
相続は全ての人に必ず生じる事項であり,それゆえ社会において絶えずかつ多数生じ続けています。
そのため,もしも非嫡出子の相続格差について違憲判断がなされれば,実務への影響は大きいと考えられます。
今回の事件について審理が終結して決定が出るまでにはしばらくかかると思われますが,大法廷がどのような決定を下すのか,注目されています。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年10月15日号(vol.64)>
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