2016/07/10
法務情報
人を雇うということは外注扱いでは済まされない①
労働法は自分には関係ない?
皆さんは,「労働基準法」や「労働者災害補償保険法」等の
「労働法」と呼ばれる法律をご存じですか?
これらは「労働者」と労働者を雇用する「使用者」の関係を規律する法律です。
皆さんの中には,
「自分のところでは雇用ではなく,外注(請負)の形で仕事を頼んでいるから,労働法は関係ない」
と思っている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし,「労働者」にあたるか否かは,就労の実態から実質的に判断されます。
したがって,皆さんのところの就労者が実は「労働者」に該当し,
後で残業代を請求されてトラブルになる,ということも起こりかねません。
そこで,これから数回にわたり,どのような場合に「労働者」にあたるのか,
「労働者」にあたる場合,どのような権利・義務関係が生じるのかをお話ししていきたいと思います。
今回は,どのような場合に「労働者」にあたるかを考えます。
労働者とは
「労働者」は,職業の種類を問わず
事業に「使用される者で,賃金を支払われる者」と定義されています(労働基準法9条)。
「使用される」とは,使用者の指揮命令を受けて働くことをいい,
就労者が
①仕事の依頼を自由に断れない,
②業務の遂行(作業方法や手順等)について指揮監督を受けている,
③勤務時間や場所が拘束されている,
④他人に代替させることができない
などの事情があれば,「使用され」ていると認められやすくなります。
「賃金を支払われる」とは,労働の対償として報酬を得ることをいい,
⑤報酬を時間単位で計算するなど,
労働を提供する時間の長さに応じて報酬額が決まる場合には,「賃金」と認められやすくなります。
さらに,
⑥事業者性が弱い
(機械・器具を自分で負担しない,報酬の額が同様の業務の従事者に比べて特に高くない等)
⑦他社の仕事を受けることが事実上制約されている,
⑧給与所得の源泉徴収や社会保険料等の控除がされている
等の事情を補完的に考慮して,「労働者」にあたると判断されることもあります。
建設業就労者の「労働者」性
裁判で建設業就労者の「労働者」該当性が争われた例も多くありますが,
労働者性を認めたもの(東京地判平成7・7・17等)も,
認めなかったもの(最判平成19・6・28等)もあります。
このように,実際に「労働者」に該当するか否かはケースバイケースと言わざるを得ませんが,
上記の①から⑧の項目にあてはまる数が多ければ,「労働者」にあたる可能性が高いと思われます。
次回のテーマは「労働者」にあたる場合に発生する権利・義務関係の予定です。
<初出:新潟県建設ユニオン様機関紙2016年3月号>
※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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