2016/07/30
法務情報
人を雇うということは外注扱いでは済まされない③
人を雇い続ける責任
使用者は,いったん雇った労働者を雇い続ける責任を負います。
使用者が労働者をやめさせる(解雇する)には,
労働法が定める条件を満たす必要があるのです。
解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当である」ことが必要
解雇は労働者にとって不利益が大きいため,
「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当である」ことが必要とされ(労働契約法16条),
法律の解雇制限規定に違反していないか,解雇の理由が重大か,
正当な手続がとられているか等の様々な観点からその有効性が判断されます。
裁判所は解雇の有効性を厳しく判断する傾向があり,なかなか有効であるとは認めません。
例えば,労働者が2週間に2度寝過ごして仕事に支障を生じさせ,
2度目の寝過ごしについては上司に虚偽の報告をしたこと等を理由とする解雇について,
本人の反省等を理由に「必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできない」
として無効とした例があります(最高裁昭和52年1月31日第二小法廷判決)。
また,業績不振等の使用者側の事情で解雇する場合には特に厳しく判断され,
①人員削減の必要性,
②解雇を回避する真摯な努力(残業削減、新規採用の手控え等),
③解雇対象者選定基準の合理性(勤務成績,労働者の生活上の打撃等),
④手続の妥当性(労働者に対する十分な説明、協議等)が要求されます。
主な法律の解雇制限規定
解雇を禁止する法律の規定には,主に以下のものがあります。
◎業務上の傷病による休業期間・産前産後の休業期間とその後30日間の解雇(労働基準法19条)
◎国籍,信条,社会的身分を理由とする解雇(労働基準法3条)
◎労働基準監督署への申告,申出を理由とする解雇(労働基準法104条)
◎不当労働行為となる解雇
(労働組合法7条,労働組合員であること,労働組合を結成しようとしたこと,
労働組合の正当な権利を行使したこと,労働委員会に申立てを行ったことを理由とする解雇)
◎妊娠中及び出産後1年以内の女性の解雇(労働基準法19条)
◎性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法6条4項)
◎妊娠,出産,育児休暇,介護休暇を理由とする解雇(男女雇用機会均等法9条3項)
解雇の手続規制
解雇する場合には,原則として30日前に予告(解雇予告)するか,
30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法20条)。
おわりに
以上,「人を雇うということは,外注扱いでは済まされない」
というテーマでお話させていただきました。
初回でお話したとおり,
「労働者」にあたるかどうかは就労の実態から客観的に判断されるので,
皆さんも他人事とは思わず,労働法について正しい知識を身につけていただきたいと思います。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。
<初出:新潟県建設ユニオン様機関紙2016年7月号>
※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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