2017/03/14
法務情報
職場のハラスメント対策は万全ですか?
新潟事務所、ビジネス、労働、燕三条事務所、長岡事務所、新発田事務所、上越事務所、その他、弁護士渡辺伸樹、企業・団体、東京事務所
近年メディアからも注目が集まっている「ハラスメント」について,
その種類と企業が講じるべき対策のポイントなどをお伝えいたします。
1. ハラスメント対策の重要性
職場で問題となるハラスメントとしては,代表的なセクハラ・パワハラのほか,ジェンダーハラスメント,マタニティハラスメント,アルコールハラスメント,エイジハラスメントなどがあり,昨今,様々な分類がなされています。
これらのハラスメントはいずれも従業員の士気の低下,離職などの弊害をもたらします。
それゆえ,事業主としては自らがハラスメントの加害者とならないよう注意するだけでは足りず,組織全体としてハラスメントの問題が生じないよう目を光らせなければなりません。
過去には,ハラスメントに対して十分な措置を講じなかったために,会社が損害賠償責任を問われた裁判例もあります。
訴訟にまで発展しないケースであっても,従業員が定着しない原因が実は職場のハラスメントにあったということも少なくありません。
2. ハラスメント対策のポイント
では,ハラスメント対策は実際にどのようにして行えば良いのでしょうか。
この点については,セクハラに関する厚生労働大臣の指針(平成18年厚生労働省告示第615号)が参考になります。
この指針は,職場のセクハラ対策のために事業者が講ずべき措置を明らかにしているものですが,同指針で示されている内容は,セクハラ以外のハラスメントについても応用が可能です。
以下では,同指針を参考にハラスメント対策のポイントを解説します。
⑴ ハラスメント禁止規定の整備と従業員への周知・啓発
ハラスメントを予防するためには,まずは就業規則などの従業員が守るべき規律を定めた文書において,ハラスメントの禁止規定を設け,これを従業員に対し周知するとともに,万が一ハラスメント行為を行った場合には,懲戒事由となりうることを明示することが重要です。
あわせて,社内研修を開催するなどして,どのような行為がハラスメントにあたるのかについて,役員・従業員に対し周知・啓発する必要があります。
⑵ 相談体制の整備
また,万が一ハラスメントが生じた場合に備え,事業主は,相談窓口を設け,その旨を従業員に周知し,ハラスメント被害を安心して相談できる体制を整えておかなければいけません。
男女それぞれの相談に適切に応じられるよう相談担当者の選定に気を配り,相談にあたっての留意事項をマニュアル化しておくなどして,相談に適切に対応できる仕組みを作ることが必要です。
場合によっては外部の機関に相談対応を委託することも考えられるでしょう。
相談者および行為者のプライバシーを保護すること,窓口に相談したことを理由に被害者に対し不利益な取り扱いを行ってはならないことは当然ですが,これらの事項をあらかじめ従業員に周知することで,相談に対する不安を取り除いておくことも同様に重要です。
⑶ 事実調査
相談の結果,ハラスメントが疑われるケースでは,行為者・被害者双方から(必要に応じて第三者から)事情聴取を行い,事実調査を行います。
被害の継続,拡大を防ぐため,事実調査には速やかに着手することが重要です。
迅速な事実調査を実施するためには,担当部署を社内で明確にし,相談から事実調査までのフローを作成しておくなどの工夫が必要になるでしょう。
⑷ 行為者・被害者に対する措置
事実調査の結果,ハラスメントの事実が確認できた場合には,行為者・被害者それぞれに対し適切な措置をとる必要があります。
行為者に対しては,就業規則等に基づき,懲戒処分などの措置を課すことを検討します。
懲戒処分を課す際は,処分内容と問題となるハラスメント行為との間でバランスがとれているかについて注意しなければなりません。
被害者に対しては,ハラスメントをきっかけに労働条件の不利益を受けていた事実があれば,その不利益を回復する措置を講ずる必要があります。
さらに,行為者・被害者がその後も同じ部署で勤務するような場合には,謝罪の機会を設ける等,必要に応じて被害者と行為者の関係改善に向けた措置をとります。
ケースによっては,逆に配置転換をして被害者と行為者をなるべく引き離した方が好ましい場合もあり,この辺りは事業主の臨機応変な対応が求められます。
⑸ 再発防止措置
ハラスメント問題が生じた場合,事業主としては,ハラスメントについての周知・啓発が足りなかったと真摯に受けとめ,再発防止に向けて,改めて役員・従業員に対する周知・啓発を行うことが大切です。
3. おわりに
職場のハラスメント対策は面倒,大変と感じる方もいらっしゃるかも知れません。
しかし,長い目で見ればハラスメント対策は職場環境の向上,ひいては会社全体の業績UPにもつながっていくものであることは間違いありません。
この機会に一度,職場のハラスメント対策を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2016年7月1日号(vol.198)>
※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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