2011/05/10
法務情報
【法務情報】会社に暴力団がやってきた?!
ある日突然,貴方の経営する会社や勤め先に暴力団(とおぼしき人)が訪ねてきて,「社長に会わせろ。」「お宅の製品で知り合いの子が怪我をした。マスコミに流されたくなければ,誠意を見せろ。」などと凄んだとしたら,皆さんならどうしますか。
まず,大切なのは,初期の対応です。
この時,窓口の人が相手の態度に怯んでしまうと、相手は、「この会社はちょろい。」との印象を抱き、増長していくきっかけになってしまいます。
そこで、(本当は恐いと思っていても)相手に恐怖や狼狽を悟られないよう、冷静かつ毅然とした態度で応対し、「この会社は簡単じゃない。」と初めに印象付けることが肝心です。
次に、社長との面談要求についてですが、具体的な用件も分からないのに、すぐに社長が会う必要などないのが普通です。
しかし、だからといって、社長が、「窓口で適当にあしらって、追い返しておけ。」などという対応をするのは感心しません。居留守を使ったことが判明すれば、相手に付け入る隙を与えることになりますし、その場しのぎの対応は問題の解決になりません。しかも、そのように逃げ腰で、面倒なことを部下に押し付ける上司は、部下からの信頼を得られず、社内の士気にも悪影響を与えること必至です。
そこで、あらかじめこのような事態が発生した場合の担当者を決めておいて、その担当者において、相手から具体的な用件を聴き取るのが望ましいでしょう。その際、相手には、社内で検討して、後日こちらから連絡する旨を伝えて、相手の名前、住所、電話番号等の連絡先を聞き出しましょう。これらの情報から相手の素性を明らかにすることが出来る場合もあります。
そして、担当者は必ず二人以上で対応してください。相手は、こちらのちょっとした対応のミスや言葉尻を捉えて揚げ足を取ってやろうと待ち構えているのですから、後に言った言わないのトラブルになることを想定して、こちらも証拠の確保に努めなければなりません。
可能であれば、会話を録音しておくのも良いでしょう。
また、一人に任せてしまうのは負担が多き過ぎますし、危険でもあります。担当者を孤立させない配慮が必要です。
その後、相手からの申告を受けて調査した結果、不祥事が確認されなければ、面談、金銭等、相手方の不当な要求には応じられないことを明確に伝えます。
万一、会社にも落ち度があることが分かったなら(製品の不良、職員の不祥事等)、その時には、事実を公表して製品の回収に当たる、監督官庁の指導を仰ぐ等の対処をしなければなりません。
それは、企業として果たさなければならない当然の責任です。
この時に、間違っても、事実を隠蔽するために、反社会的勢力に金銭を渡すようなことをしてはなりません。そんなことが明るみに出れば、企業として回復不可能なダメージを受けることになります。また、金銭を渡した者は、背任等の刑事責任を追及されることにもなりかねません。
また、相手が暴力団だから、こちらも暴力団に解決を依頼するなどもってのほかです。安易な考えで暴力団を利用すれば、結局は暴力団に弱みを握られ、取り込まれることになります。
近時は、反社会的勢力の不当な要求に応じない、反社会的勢力に利益供与をしないということだけでなく、 通常の経済取引も含め、反社会的勢力とは一切の関係を持たないことまでが求められるようになっています。
企業防衛、企業の社会的責任、治安対策(暴力団の資金源対策)の点からも、企業には自覚的な対応が望まれるところです。この点については、平成19年6月に政府の犯罪対策閣僚会議幹事申し合わせとして出された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」に詳しいので、是非一度、ご覧になってください。
事が起きてからでは適切な対応は困難です。上記の指針等を参考に、日ごろから、かかる事態に備えて体制を整えておくことが肝要です。
少なくとも、「暴力団を恐れない」「暴力団に金を出さない」「暴力団を利用しない」この3つの「ない」を社内での共通認識とし、毅然とした態度を崩さないことを徹底しておかれることをおすすめします。
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年6月1日号(vol.55)>
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