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法務情報

2017/11/20

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農地法改正 ~農地を所有できる法人の要件が緩和されました~

新潟事務所弁護士今井慶貴燕三条事務所新発田事務所上越事務所その他東京事務所

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農地法改正の概要

平成28年4月1日から、農地を所有できる法人の要件について、法人が6次産業化等を図り経営を発展させやすくなる観点から見直しを行い、要件を満たす法人の呼称を「農業生産法人」から「農地所有適格法人」に変更する法改正が施行されました。

 

6次産業化とは?

最近よく聞く言葉である「6次産業化」の意味ですが、「1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す」ことをいいます。

 

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法改正の内容

 

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そもそも法人が農業に参入するには?

ここで、法人が農業に参入する場合の基本的な要件を確認してみます。基本的には個人と同様となっています。

 

1.農地のすべてを効率的に利用

機械や労働力等を適切に利用するための営農計画を持っていること

2.一定の面積を経営

農地取得後の農地面積の合計が、原則50a(北海道は2ha)以上であることが必要(この面積は、地域の実情に応じて、市町村の農業委員会が引き下げることが可能)

3.周辺の農地利用に支障がない

水利調整に参加しない、無農薬栽培の取組が行われている地域で農薬を使用するなどの行為をしないこと

 

 

そのうえで、法人が農地を「所有」するためには、上で述べた農地所有適格法人の要件を満たすことが必要です。

他方で、法人が農地を「貸借」するだけであれば、農地所有適格法人である必要がありません(全国どこでも)。

 

法人が農地を貸借する要件は次のとおりです。

 

1.貸借契約に解除条件が付されていること(農地を適切に利用しない場合に契約を解除すること)
2.地域における適切な役割分担のもとに農業を行うこと(集落での話し合いへの参加、農道や水路の維持活動への参画など)
3.業務執行役員又は重要な使用人が1人以上農業に常時従事すること(農作業に限られず、マーケティング等経営や企画に関するものであっても可)

 

なお、個人や法人が、耕作目的で農地を売買又は貸借する場合には、原則として農業委員会の許可を受ける必要があります(許可を受けないでした行為は無効)。

他の方法として、 農業経営基盤強化促進法に基づく市町村作成の農用地利用集積計画(利用権設定等促進事業)を利用する方法もあります(農地法の法定更新の定めが適用されない)。

 

法改正の影響は?

今回の法改正で、農地を「所有」することができる法人の要件が緩和され、従来に比べて一般企業が農業分野に参入しやすくなったといえます。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 慶貴

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2016年9月5日号(vol.200)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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