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法務情報

2011/07/26

法務情報

【法務情報】死後のシミュレーションの重要性

遺言・相続弁護士大橋良二新発田事務所

1 昔よりも親族関係が希薄になったためか、権利意識が高まったためかはわかりませんが、近年、遺産分割事件が少しずつ増えているようです。

 
 弁護士は、遺産分割が紛争に至ってから関与することがまだ多いのですが、分割協議の際には、相続人の方から「遺言を残しておいてくれたらこんなことにはならなかったのに」という言葉を聞くことが多々あります。

 
2 このように、遺言について漠然としたイメージを有している方は多いとは思いますが、そうはいっても、実際に生前に遺言を残している方は、まだまだ少ないというのが実情です。

 
 一口に遺言といっても、実際に遺言を作る際には、何をどう考えて、何を遺言に書けばよいのかわからない方が多いのではないかと思います。

 
 最近では、遺言の作り方の本なども手に入りますが、それでも実際に遺言を作る方が少ないのは、何のために「遺言」を書かなければならないのか、わざわざ遺言を書く必要があるのかどうか、といった点についてイメージが持てないからかもしれません。

 
3 では、具体的に何のために遺言を作る必要があるか、自分の場合に遺言を作る必要があるかどうかについて、どのようにしたらイメージを持つことができるでしょうか。

 
 それは、実際にあなたの死後にどのような問題が生じうるかという「あなたの死後」をシミュレーションしてみるとわかります。

 
 すなわち、仮にたった今、あなたが亡くなったとしたら、
  ・あなたの財産を誰がどのような割合で相続することになるのか
  ・あなたの財産にはどのようなものがあり、どのような価値があるのか
  ・誰がどのような割合で財産を相続するのか
  ・相続人の誰かが納得しなかった場合には、どのように分配されることになるのか
    (=法律上の規定に基づくとどのように分配される可能性があるのか)

 
といった基本的な内容を確認して、シミュレーションしてみるのです。具体的なシミュレーションまでしてみると、問題点が把握でき、遺言を作成したいという気持ちになってくるのだと思います。

 
4 余り知られていないかもしれませんが、このようなシミュレーションは、遺言作成のための調査を弁護士に依頼することで行うことができます。

 
 もし、今あなたに万が一のことがあった場合に、「誰が相続人で」、「どのような財産があって」、「その財産がどのくらいの価値で」、「法律に従うと、誰がどのくらいの遺産を分割して受け取ることになるか」ということは、法律の専門家であり、相続案件を多く扱う弁護士でなければ、調査や判断が難しいように思います。

 
 ですから、少しでも自分の死後について思いを巡らせることがあるのであれば、弁護士に調査を依頼し、その後実際に、あなたの死後について具体的なシミュレーションをしてみるとよいのかもしれません。

 
 そして、そのシミュレーションの結果、遺言を残さなければならないほどの必要性があると感じたのであれば、遺言作成をすればよいのです。
5 ちなみに、弁護士に相談や調査を依頼する必要性がある方というのは、どのような方でしょうか。

 
 全く漠然としたイメージですが、たとえば、「子どもが2人いて、自宅がある」といった場合には、相談や調査する意味があると(個人的には)思います。複数の土地建物がある場合や、疎遠な親族が相続人となり得るという場合、さらに、事業をされている方の場合には、事業承継(=誰にどう引き継がせるか)という問題も生じてくるので、より相談する必要性が大きいと思われます。

 

6 最近では、病気に関して早期治療のための定期検診は常識となりつつありますが、自分の健康を守るために定期検診に行くように、自分の死後の憂いをなくすためにも、(あるいは、ちょっとした興味本位でも)、一度は、弁護士に遺言作成の調査を依頼することが、これから一般的になっていくのかも知れません。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年3月1日号(vol.49)>

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