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法務情報

2011/06/08

法務情報

【法律相談】株式の承継

新潟事務所遺言・相続弁護士和田光弘

Q 私の会社では、社長(70歳)が8割の株式を保有し、専務(45歳)の私が2割の株式しかありません。
 もし、相続となると、母と妹や弟にも、株式が分散し、私が実質的に経営してきた会社の運営が、社外の親族によって混乱しかねないと心配しています。どうしたら、いいでしょうか。

 

A 社長と協議して、いくつかの方法を検討する必要があります。

 
 一つの方法として、相続人に対して、会社が売り渡しを請求できる定款を定めておくことができます(会社法174条、466条、309条2項11号)。

 
 段取りとしては、まず、定款を特別決議(出席株主の3分の2以上の賛成)で変更します。内容は、「当会社は、相続人その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」と定めればよいと思います。

 
 また、社長が亡くなられる前に、専務も、代表権をもつ副社長か社長に昇格しておいてもらった方がいいでしょう。

 
 この定款変更後、社長が亡くなられた場合には、「1年以内」に売り渡し請求の手続を進めることが必要です(会社法176条1項)。

 
 売り渡しの請求は、①売り渡しを請求する株式数、②請求相手の氏名を株主総会の特別決議で決めることになります。

 
 このとき、相手方の株式は、その決議を行う株主総会で議決権を行使できません(会社法175条)。ですので、母親、妹、弟の相続株式をすべて指定すれば、専務の株式だけで、決議することとなり、特別決議は成立します。

 
 その後、買い取る株式の売買価格を協議することになります(会社法177条1項)。

 
 もし、その売買価格の協議が成立しない場合は、売り渡し請求を行った日から20日以内に、裁判所に売買価格の決定をしてほしいとの申し入れをします。

 
 裁判所は、売り渡し請求を行った際の会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定することになります(会社法177条2項~5項)。裁判所が価格を決定すれば、その価格を相手方に支払い、株式の譲渡がなされることになります。

 

【手続の流れチャート】

現在の定款変更(相続人等に対する売り渡し請求)・特別決議

相続の開始

売り渡し請求・特別決議(相手方の議決権は行使できない)

価格協議・決定

 

 ◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 和田 光弘◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年5月号(vol.27)>

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