2019/02/19
法務情報
働き方改革関連法について
新潟事務所、ビジネス、労働、燕三条事務所、長岡事務所、新発田事務所、上越事務所、企業・団体、東京事務所、弁護士細野希
2018年6月29日、「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が成立し、2019年4月1日から施行されることになりました。
これに伴い、労働基準法を始めとする関連法令が改正され、各企業は、就業規則の整備等の対応を取ることが必要となりました。
働き方改革関連法においては、主に「労働時間」及び「同一労働同一賃金」に関する法整備が行われていますので、ポイントをご説明したいと思います。
≪労働時間関係≫…労働基準法等関係
(1)時間外労働の上限規制
今まで、時間外労働は、労働基準法36条2項で、厚生労働大臣により基準を定めることができると規定されていましたが、法律上は規定されていませんでした。
そこで、長時間労働を是正するために、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間と定めることになりました。
また、臨時的な特別な事情がある場合でも、時間外労働の上限は、年720時間、月単位100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度とするとされています。
特別な事情とは臨時的なものに限られ、一時的又は突発的であること、1 年の半分を超えないと見込まれることが必要です。
なお、中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定は、2020年4月1日から適用されます。
(2)年次有給休暇の確実な取得
使用者は、年休が10日以上付与される労働者に対し、年5日の年休については、毎年、時季指定をして与えなければならないとされました。
ただし、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年休の日数分については、指定の必要はありません。
また、使用者が、時季を定めるに当たっては、①労働者に対して時季に関する意見を聴く、②時季に関する労働者の意思を尊重するよう努める、③使用者は、年休の取得を確実に把握するために管理簿を作成する、ことが必要となりました。
(3)月60 時間超の時間外労働に対する割増賃金
労働基準法37条1項ただし書きでは、1か月60時間を超える時間外労働をした場合、その超えた時間に対して、通常の賃金の50%以上の率で計算した割増賃金を支払うことが定められていましたが、中小企業に対しては猶予措置が定められていました。
しかし、今回の法改正で、中小企業への猶予措置は2023年4月1日から廃止されることになりました。
そのため、中小企業であっても1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率は、限度時間を超える時間外労働の割増賃金率の定めにかかわらず、50%以上とする必要があります。
(4)高度プロフェッショナル制度の創設
高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務(対象業務)に就く労働者については、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規制を適用しないとされました。
対象業務としては、金融商品の開発業務、アナリスト業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発などが挙げられています。
ただし、職務範囲が明確に定められていること、年収が1075万円以上であること、健康確保措置が講じられていること、本人の書面等による同意を得ることなど様々な条件を満たしている必要があります。
≪同一労働同一賃金関係≫…パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法関係
(1)不合理な待遇差を解消
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
今回の法改正では、次のことが定められることになりました。
ⅰ パートタイム・有期雇用労働者について、正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断される旨の明確化
ⅱ 有期雇用労働者について、正規労働者と「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」が同一である場合には均等待遇の確保の義務化 ⅲ 派遣労働者について、派遣先の労働者との均等・均衡待遇又は一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同程度以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇の義務化 |
なお、パートタイム・有期雇用労働者についての正規雇用労働者との不合理な待遇差の禁止規定は、2020年4月1(中小企業は、2021年4月1日)から適用されます。
派遣労働者について、派遣先の労働者との不合理な待遇差の禁止規定は、中小企業も含めて2020年4月1日から適用されます。
(2)待遇に関する説明義務
正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明についても義務化されました。
働き方改革は、長時間労働、雇用の格差、労働力人口の減少など様々な問題を改善し、労働者が多様な働き方を選択できる社会の実現を目的としています。
改正法は、使用者にとっては負担が大きくなることもあるかもしれませんが、労働環境を適切に保つことによって、労働者とのトラブルを未然に防止し、生産性を高める結果に繋がることもありますので、今一度、働き方の見直しをされてみてはいかがでしょうか。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 細野 希
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年11月5日号(vol.226)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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