2011/08/02
法務情報
【法律相談】「うつ病」の契約社員への対応
相談者=「相」 弁護士=「弁」
相 私は、食品会社の工場長をしています。2年前に工場で採用した契約社員(A・女性・35才)がこの春から様子がおかしいので、精神科の受診を勧めたところ「うつ病」と診断されました。半年ほど通院していますが、最近では欠勤する日が多く、出勤しても決められた作業を放棄するようになりました。会社として今後どう対応したらよいでしょうか?
弁 最近は、あちこちの職場で「うつ病」や「うつ状態」になっている社員(職員)のことが報告されています。当事務所にも最近、同種の相談が持ち込まれるようになりました。以前は、この種の病気は内臓疾患などと同じように「私傷病」として取り扱われていました。しかし、この種の病気は、発症の有無(時期)やそれの程度を判断することが容易でなく、精神科の受診を勧めても拒否する者さえいます。
相 当社のA社員の場合も、最初は精神科の受診を嫌がっていましたが、そのうち、仕事も手につかない状態になったので親(身元保証人)に連絡して一緒に病院に行ってもらったのです。
弁 私の顧問先の会社でも、以前同じようなケースがあり、人事担当者は大変困っていました。その会社の場合は、30年近く勤務している幹部社員であったため、余計に対応に苦慮されたようです。
相 当社の場合は工場雇いの契約社員ですので、次の契約更新をしないで措置したいと思っていますが問題になりますか?
弁 1年契約の契約社員だからといって、簡単に更新拒絶ができるかというと必ずしもそうではありません。更新を繰り返し、長期雇用が常態となっているような場合には、正社員と同じ取扱いが要請されます。あなたの会社の雇用実態が問題になるかもしれませんし、A社員の雇い止め(更新拒絶)が「解雇」と判断されるおそれもあります。
相 A社員の場合、来年4月が2年目の終期ですので、今すぐ判断しないで様子をみた方がよいでしょうか?
弁 とりあえず、本社の人事担当とよく協議した方がよいと思います。他の工場や他の部門でも、今後、同じような病気になる社員や契約社員が出てくる可能性があるので、この際、他社の取扱事例などの情報も収集して、会社としての取扱基準のようなものを作った方がよいと思います。
相 A社員の今後の勤務実績によっては、解雇することも可能ですか?
弁 就業規則に定める解雇事由に該当すれば、更新拒絶は勿論、解雇も可能です。専門医の意見や本人及び家族の意向なども汲んで慎重に手続を進め、労使紛争にならないよう留意して下さい。
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年11月号(vol.33)>
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