2020/08/20
法務情報
HIV感染不告知を理由とした採用内定取消しを違法とした事例 ~札幌地裁令和元年9月17日判決~(弁護士:五十嵐亮)
新潟事務所、労働、燕三条事務所、弁護士五十嵐亮、長岡事務所、新発田事務所、上越事務所、企業・団体、東京事務所、長野事務所、高崎事務所
五十嵐亮弁護士の労務情報が更新されました。
事案の概要
当事者
原告であるXは、被告Y法人が経営する病院に社会福祉士として採用内定を受けた者である。
被告であるY法人は、病院や社会福祉法人を経営する社会福祉法人である。
採用内定取消しに至る経過
ア)
Xは、平成22年6月、Yが経営する病院を受診した際、問診票にHIVに感染している事実を記載した。
イ)
平成29年12月25日、Y法人はXの採用面接を実施した。
その際、Xは持病の有無を問われたが、HIVに感染している事実は告げなかった。
ウ)
Y法人は、Xを平成30年2月1日付けで社会福祉士として採用することを内定し、平成29年12月30日付け採用内定通知書をXに交付した。
エ)
その後、Y法人は、Xの同意を得ずに、上記アに記載の情報を入手したところ、XがHIVに感染している情報が記載されていた。
そのため、Y法人は、Xに対し、平成30年1月12日、持病の有無について電話で質問したが、XはHIVに感染していることを否定する旨の返答をした。
オ)
Xは、平成30年1月24日、Y法人に対し、主治医が作成した診断書を提出した。
同診断書には、病名欄に「HIV感染症」との記載があり、「就労に関しては問題なく、業務上で職場での他社への感染はないことが記載されていた。」
カ)
Y法人は、平成30年2月5日、Xに対し、採用内定取消通知書を送付して内定を取り消すとの意思表示をした(以下「本件内定取消し」という)。
内定取消しの理由は、「面接時に病状に対しての説明がなく、1月12日の質問の際にも正確な回答をしなかったこと」であった。
Xの請求内容
Xは、本件内定取消しは違法であると主張して、Y法人を提訴した。
争点
本件の争点は、以下の2点である。
①Xが採用面接の際に持病の有無を問われたにもかかわらず、HIVの感染の事実を告げなかったことは採用内定取消しの理由になるか
②採用内定後、Xが、Y法人から持病について質問された際、HIV感染の事実を否定する旨の返答をしたことが採用内定取消しの理由になるか
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