2022/07/11
法務情報
離婚後の共同親権とは(弁護士:古島 実)
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法務省が法制審議会(法相の諮問機関)の部会に、家族法制見直しの中間試案のたたき台を示し、離婚した父母双方を親権者にできる「離婚後の共同親権」の導入を提案したとの報道もあり、離婚後の共同親権についての議論がされるようになりました。
そこで、離婚後の共同親権について説明します。
1 親権とは何か
現行法では、夫婦に未成年の子がいる場合、親権は父母が共同で行使します。
そして、離婚する場合、親権者を父母どちらか一方に定め、単独で親権を行使します。
ところで、親権とは、未成年の子どもに対する親の権利義務の総称をいい、親権の内容を大きく二つに分けると身上監護権と財産管理権があります。
身上監護権は、子どもの教育や身のまわりの世話を行う権利義務のことをいいます。
これには、居所指定権(子どもの住む場所を指定することができる権利)、懲戒権(子どもに対して必要なしつけを行う権利)、職業許可権(子どもが職業を営むことについて許可を与える権利)、身分上の行為の代理権(認知の訴えや相続の承認・放棄等、特別な身分行為を子どもに代理して行う権利)があります。
財産管理権は、子ども名義の財産を管理し、子どもの代理人となる権利義務のことをいいます。
民法第820条に「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定められているように、親権は、親権者が子どもの利益のために行う権限と義務であり、物に対する所有権のように権利者が自らの利益のために自由に行使する権利とは全く異なります。
2 現行法では離婚後は単独親権
多くの場合では、子どもは親権者となった親の元で暮らし、親権者とならなかった親は、子どもと定期的に面会交流を行い、親権者になった親に養育費を支払います。
離婚後に親権者にならなかった親も、親であることに変わりがなく、離婚前と同様に、子どもの成長に関わりたいと思うはずです。
そして、離婚後も両親が子どもの成長にかかわった方が子どもにとってもプラスになると思います。
しかし、離婚後は、親権者とならなかった親と子どもは疎遠になり、だんだん、面会交流も行われなくなり、養育費の支払いも滞ったりする場合も多いです。
特に、離婚の際に、親の一方が他方の親に不信感を持つような事情があり、離婚後に信頼関係が形成されない場合は疎遠になってしまうことも多いと思います。
3 離婚後の共同親権
そこで、親権を婚姻中と同様に、離婚後も両親に共同で親権を行わせようというのが共同親権です。
共同親権とすることによって、離婚後も、国の制度上、両親が子どもの成長にかかわることになり、子どもの成長にとってプラスになり、面会交流が積極に行われ、養育費の支払いが維持されるなどの効果も期待されます。
ただ、離婚に至った事情にDVや虐待のなどがある場合は、そもそも共同親権が期待できない場合もあると思われます。
4 共同親権を実施ための環境の整備の必要
未だ、導入の可否も、具体的な内容も決まっていませんが、導入に際しては実施のための環境の整備が必要になると思います。
まず、離婚に際して、共同で行使する親権の内容を適切に定めるのが大切になってきます。
親権を行使する場面を具体的に考えると、共同で行使すべき重要な事項や養育する親権者が単独で決めるのが妥当である事項も考えられ、個別具体的な事情を考慮する必要があります。
また、離婚に際して、共同親権の内容に両親の合意が得られないことも考えられます。
そして、離婚後は、父母は同居していないので、婚姻中と同じく親権の行使をすることは難しく、例えば、共同親権となっている事項について両親の意見が一致しない、そもそも父母が協議できない場合があることが考えられ、制度的な配慮が必要になってきます。
このような場合は、最終的に、家庭裁判所が、個別具体的な事情を検討して決めることになり、家族の在り方に国家機関である裁判所が大きな役割を果たすことになります。
また、弁護士も、これまでは、離婚に際しては、親権者の決定にのみに関与し、離婚後の親権の行使にはあまり関与しませんでした。
しかし、共同親権が導入されると、離婚に際しては共同親権の内容の協議に弁護士が代理人として関与し、また、離婚後も共同親権の行使について弁護士が代理人として関与することが考えられます。
弁護士も共同親権が導入される場合は適切に役割を果たせるように、十分に準備しておくことが必要になってきます。
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