2022/08/30
法務情報
教員の長時間労働について(弁護士:朝妻 太郎)
新潟事務所、燕三条事務所、長岡事務所、新発田事務所、上越事務所、弁護士朝妻太郎、コラム
教員の長時間労働の問題とは
文部科学省が今年8月から、全国の小中学校、高校を対象とした教員勤務実態調査を開始したと報道されています。
8月、10月、11月それぞれの連続する7日間の勤務実態を調べるもので、近年問題が顕在化している教員の長時間労働の問題の改善に繋がるのではないかと期待されています。
学校の先生は、毎日の授業だけではなく、授業の準備、教材の作成、保護者対応、部活動指導など業務内容が多岐にわたり、相当な長期間働いているように見えます。
実際に私の家の近くの小学校も教務室の明かりはかなり遅い時間まで点いています。
給特法について
そもそも、学校の先生の時間外労働についてはどのようになっているのでしょうか。
学校の先生(教員)も当然に労働基準法上の労働者に該当します。
そのため、本来的には、労働基準法が定める時間外労働及び時間外勤務手当に関する規定が適用されるはずです。
しかし、公立学校の教員については、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)という法律が適用されます。
この法律は、いわゆる時間外労働について、休日勤務手当や時間外勤務手当などを支給しない代わりに給料月額の4パーセントを教職調整額として支払われる旨定めています。
つまり、一般的な労働者の場合には、時間外労働(法定労働時間を超えた場合)をした際には25%割増の、法定休日労働の際には35%割増の割増賃金が支払われることになります。
これに対して、公立学校の教員については時間外労働の時間の長短に関わらず、給与月額の4パーセントの教職調整額が支払われることになるのです。
これは、教員の勤務時間が不規則で管理しづらいということから、1971年当時定められたものです。
なお、この給特法は単に4パーセントを定めたのみではなく、公立学校の教員に時間外勤務を命じることができる場合を政令に定められた場合に限定しています。
具体的には、超勤4項目といわれる、実習、学校行事、職員会議、非常災害などに必要な業務に限定しているのです。
しかし、実際には、この4項目に何が該当するかは不明確な上、それ以外にも教員が行うべき業務は無数に存在しているのが現実です。
最新の裁判例
教員の時間外労働について異を唱える人も当然います。
それが、8月25日に東京高裁で判決が出された埼玉の教員の事案です。
埼玉県内の公立小学校の男性教員が自治体に対して約242万円の未払い賃金の支払いを求めたものですが、東京高裁は、超勤4項目に限らず、給特法は労働基準法の適用を排除するとし、請求を棄却しました。
教員は上告するようですので、最高裁での判断に委ねられることになります。
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