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2023/01/06

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監査法人で無資格者を「公認会計士」と記載(弁護士:今井 慶貴)

新潟事務所弁護士今井慶貴燕三条事務所長岡事務所新発田事務所上越事務所コラム

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

無資格者を「公認会計士」と記載してしまった背景

昨年末に、日本公認会計士協会(以下「会計士協会」)から「公認会計士」の名称記載に関する上場会社を担当するすべての監査事務所を対象とした自己点検結果が公表され、計18事務所で無資格者を「公認会計士」と記載していた事実が発覚したというニュースがありました。

事の発端は、昨年夏頃に複数の大手監査法人の作成した書類に、資格を取得していないにもかかわらず「公認会計士」と記載した事案が公表されたことを受けて、自主規制団体である会計士協会が一斉調査を行ったというものです。

同じ国家資格に基づいて仕事をする身からすると、無資格者を資格者として表示することは「あり得ない」ことであり、しかも、コンプライアンスに厳しいはずの監査法人でそのようなことがあったのは、二重の驚きです。

会計士協会の発表した資料をみると、発生原因として、以下のようなことが挙げられていました。

・公認会計士の名称を使用することの重要性の意識の欠如

・公認会計士登録者と非登録者が混在している職位があり、誤認を生じやすい状況の存在

・資格情報を確認する必要があることの周知不足、確認漏れ

・本人の確認不足

「そんな緩い話なの?」という感じがしますが、どうやら公認会計士の資格取得までの制度に一因があるようです。

 

試験に合格しただけでは公認会計士になれない

公認会計士になるためには、公認会計士試験(短答式試験、論文式試験)に合格しただけでは駄目で、その後、2年以上の業務補助等の期間を経て、一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務補習を受けて会計士協会による修了考査に合格して内閣総理大臣の確認を受けて初めて公認会計士となる資格が得られます。

そのうえで、公認会計士名簿に登録し会計士協会に入会する必要があります。

ところが、修了考査に合格しているにもかかわらず、⾧期にわたり公認会計士登録していない人がいるようであり、そのことが今回の問題発生の一因となっていたということです。つまり、「無資格者」といはいっても、「ほとんど資格者」という人が公認会計士を名乗っていたということなのですね。

いずれにせよ、この問題によって監査の有効性に影響はないものの、有価証券報告書で会計士の人数などの訂正が数十件に及んでいるということです。顧客企業の立場からすれば「どうなってんですか?」という感じでしょうか?

今後は、会計士協会の執行部と独立した機関が処分内容を検討するとのことで、成り行きに注目したいところです。

 


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