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法務情報

2023/02/15

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新潟県弁護士会編集による『労働災害の法律実務』出版のご紹介(弁護士:和田 光弘)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 和田 光弘

和田 光弘
(わだ みつひろ)

一新総合法律事務所
顧問/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:早稲田大学法学部(国際公法専攻)

日本弁護士連合会副会長(平成29年度)​をはじめ、新潟県弁護士会会長などを歴任。

主な取扱い分野は、企業法務全般(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)。そのほか、不動産問題、相続など幅広い分野に精通しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、企業のリスク管理の一環として数多くの企業でハラスメント研修の講師を務めた実績があります。​

『労働災害の法律実務』出版!

2022年8月、新潟県弁護士会が『労働災害の法律実務』という実務家用の専門書を編集しました。

 

想定している購入者は主として弁護士ではありますが、むろん、一般の方も気になるところだけ読む限りでは参考になると思います。

使用者の方も、労災に遭われた方も、両方の立場で見ても有益でしょう。

 

どうして、こんな本を新潟県弁護士会が作ったのでしょうか。

 

実は、弁護士会には、「関東十県会」という、多少何か反社会勢力の片割れのようにも思える(?むろん誤解です。)名前の団体があります。

 

これは、東京の3つの弁護士会(第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、東京弁護士会)を除いた東京高等裁判所管轄内の10弁護士会(新潟、長野、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、神奈川、静岡、山梨)によって構成される団体です。

 

この十県会では、毎年8月に持ち回りで夏期研究会を開催して、様々な専門分野の研究成果を発表しています。

 

それが、今年、新潟県弁護士会の当番となり、この本が編集されたのです。

 

これまでにも、「保証」や「相殺」、「契約解除」などが取り上げられています。

 

なぜ「労働災害」か?

それでは、今年はどういうことから「労働災害」を取り上げたのでしょうか。

 

実は、事業をやっていれば、けっこう労働災害にはぶつかるのですが、実際に弁護士のところまで相談に来るというケースは案外少ないのです。

 

令和3年1月から12月までの「休業4日以上の死傷者数」というものが、厚生労働省から発表されています。

 

14万9918人、つまりほぼ15万件です。

 

そのうち、死亡者数は867人となっています。

 

大半のケースは、弁護士のところに行くほどのことにはならないため、意外と弁護士たちも初めて経験するという人が多いのです。

 

それで、「初めての弁護士にもわかりやすく」「経験のある弁護士にも役に立つ」という考え方に基づいて、この「労働災害」が選ばれたわけです。

 

お前は何をしたのか、と聞かれそうです。

 

実は、私はこの新潟県弁護士会における実行委員会(正式には「2022年度関東十県会夏期研究会実行委員会」という長い名前)の委員長をやりました。

 

本当は、委員長というのは、「そうせい」とだけ言っていれば良い役回り(幕末長州藩の殿様が家臣の言うことに反対せず「そうせい」とだけ言っていたので「そうせい侯」という渾名がついたそうですが。)のはずなのですが、今回は、最後に原稿枚数が多すぎて予算が足りなくなるという大問題が発生して、会員がせっかく用意してくれた玉稿をあれこれ短くしたり、酷い場合にはボツにするという荒技もやらざるを得ず、大変な役回りとなりました。

 

何か、知らずに自慢めいた話になりかねないので、ここでやめます。

 

本の中身は?

 

さて、大事な中身の話です。

 

一体、何が書かれているかということです。

 

本当はご購入いただければ、大変嬉しいのですが、忙しい皆様にそうもお願いできないので、ほんのさわりをご紹介します。

 

まずは、労災事件というものの基礎的な事柄を解説しています。

 

制度概要はもちろんですが、手続の概要も説明しています。

 

わからないことを探すには、ここが手っ取り早いでしょう。

 

その次に、「業務上で起きた災害」(専門的には「業務起因性」)というためにはどのような要件が必要か、ということを解説しています。

 

普通は、この2つの説明を受ければ、大体はわかるということになります。

 

問題は、労働基準監督署の手続で終わらず、裁判になってしまった場合です。

 

そこでは、使用者が果たさなければならない「安全配慮義務」という問題があり、それが、労働契約とどういう関係があるのか、また民法の不法行為責任とどういう関係にあるのか、という専門的な問題を、様々な事故の状態を取り上げて解説しています。

 

これが第3章なのですが、ほぼ100ページを費やしていまして、専門家にとっては、とても重要なところです。

 

日本の労働実態で大きな問題は何か、心当たりがありますか。

 

それは、過重労働とハラスメントです。

 

その2つについて、たくさんの裁判所の判断が出ていまして、その判例の状況も詳しく載せています。

 

専門家必読の箇所です。

 

その次が損害論で、過失相殺の実情を裁判所の判断を中心に論じています。

 

この分野も本書の特徴ですが、裁判所が使用者と労働者で損害をどのように振り分けているか、実際のところ、非常に参考になるところです。

 

ほかには、証拠収集の方法や、特殊な法律関係にある公務員の場合などを解説しています。

 

どうですか、1冊ぐらい?

ということで、中身も盛り沢山です。

 

全400ページで4500円プラス消費税というギリギリ5000円に入るところで価格設定されています。

 

安くはありませんが、中身を見れば高くもないでしょう。

 

「あとがき」を私が書いています。

 

お試しに1 冊いかがですか。

 

 

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2022年12月5日号(vol.275)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。


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