2023/03/22
法務情報
相隣関係規定が改正!隣地使用権の改正ポイント(弁護士:長谷川伸樹)
新潟事務所、燕三条事務所、長岡事務所、新発田事務所、上越事務所、弁護士長谷川伸樹、コラム
1 相隣関係規定の改正が迫っています!
令和5年4月1日、民法の相隣関係規定の改正法が施行されます。
債権法改正に比べるとインパクトは大きくなく、メディアで頻繁に取り上げられているわけでもないためご存じでない方も多いかもしれません。
ただ、相隣関係、つまりお隣さんとのご近所付き合いの中で生じる問題に関する法規制の改正ですので、債権法の改正と同じくらい、皆さんの生活に近しい分野の法改正となります。
さらに紛争の解決にも役立つ改正内容もありますので、今回は改正内容の1つである「隣地使用権」を取り上げて解説したいと思います。
2 お隣さんの土地を無断で使用できる?「隣地使用権」改正のポイント
実はこの隣地使用権、改正前の民法(現在の民法)209条にも似たような規定があります。
土地所有者は「土地の境界またはその付近において障壁または建物を築造、または修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる権利」です。
しかし、お隣さんに「隣地の使用を請求することができる」と定められていても、何を請求できるのか、お隣さんが請求を拒否した場合はどのようなことができるのかが不明確であり、争いごとの解決には心許ないものとなっていました。
今回の改正では、お隣さんに何らかの請求をするのではなく、お隣さんの土地を「使用できる権利」を直接定めることとなりました。
隣地を使用する権利を直接定めたことが改正の肝となります。
3 ご注意ください!隣地使用の条件
「お隣さんの土地を勝手に使うことができるのか?」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、もちろん無制限に使用できるわけではありません。
改正民法209条1項は①以下の場合に、②必要な範囲で、「隣地を使用することができる」と定められています。
- ●境界orその付近における壁、建物などの収去・修繕
- ●境界標の調査or境界に関する測量
- ●隣地から自身が所有する土地に越境して伸びた枝の切取り(※隣地所有者が切除に応じてくれない場合などに限られます。)
さらに、隣地使用の日時、方法等については、お隣さんにもっとも負担が少ないものを選択する必要がありますし、事前の通知義務や、損害が生じた場合の賠償義務も民法に規定されています。
隣地を無制限に使用できるわけではないという点は十分ご注意ください。
4 「隣地使用権」活躍の場
このような規定は、ご近所付き合いが良好な方の場合は特に問題になりません。
お隣さんに丁寧にごあいさつにいって、隣地使用の承諾をいただき、使用のお礼をすれば特に問題が生じません。
もっとも、現在はお隣さんとのお付き合いも希薄になっている方も多いかと思いますし、お隣さんが少し個性的な方である場合もあります。
隣地付近の壁が老朽化し、放置すれば崩れてしまい歩行者が怪我を負うなどの危険が生じていても、お隣さんが嫌がらせで隣地使用を承諾しなかったり、高額の使用料を請求されたりする場合もないとはいえません。
このような問題が起こった際にも、改正民法の規定を根拠に隣地の使用を正当化できるわけですね。
壁の補修・収去作業ができない!といった事態を回避することができます。
5 おわりに
隣地使用権の他にも、隣地から伸びた枝の切除に関する規定の改正等もされています。
お隣さんとの間でいさかいが起こってしまった際には、ぜひ改正民法の存在を思い出し、弊事務所までご相談いただければ幸いです。
◆弁護士コラム一覧はこちら
◆相談のご予約・お問い合わせはこちら
【ご注意】
◆記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。
◆当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。本サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、当事務所は一切の責任を負いません。
◆本サイト上に記載されている情報やURLは予告なしに変更、削除することがあります。情報の変更および削除によって何らかの損害が発生したとしても、当事務所は一切責任を負いません。
カテゴリー
月間アーカイブ
- 2024年11月(1)
- 2024年10月(1)
- 2024年9月(1)
- 2024年8月(1)
- 2024年7月(2)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(2)
- 2024年4月(1)
- 2024年3月(2)
- 2024年2月(2)
- 2024年1月(1)
- 2023年12月(1)
- 2023年10月(2)
- 2023年9月(2)
- 2023年8月(2)
- 2023年7月(2)
- 2023年5月(1)
- 2023年4月(2)
- 2023年3月(2)
- 2023年2月(2)
- 2023年1月(2)
- 2022年12月(3)
- 2022年11月(2)
- 2022年10月(1)
- 2022年9月(1)
- 2022年8月(2)
- 2022年7月(2)
- 2022年6月(1)
- 2022年5月(1)
- 2022年4月(1)
- 2022年3月(2)
- 2022年2月(1)
- 2022年1月(1)
- 2021年12月(1)
- 2021年11月(1)
- 2021年10月(2)
- 2021年9月(2)
- 2021年6月(1)
- 2021年4月(2)
- 2021年3月(1)
- 2021年1月(3)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(10)
- 2020年10月(5)
- 2020年9月(7)
- 2020年8月(4)
- 2020年7月(3)
- 2020年6月(3)
- 2020年5月(11)
- 2020年4月(5)
- 2020年3月(2)
- 2019年12月(1)
- 2019年9月(1)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(3)
- 2019年5月(2)
- 2019年4月(1)
- 2019年3月(3)
- 2019年2月(2)
- 2018年12月(1)
- 2018年10月(2)
- 2018年9月(1)
- 2018年7月(1)
- 2018年6月(1)
- 2018年5月(1)
- 2018年4月(1)
- 2018年3月(1)
- 2017年12月(1)
- 2017年11月(2)
- 2017年5月(1)
- 2017年3月(1)
- 2017年2月(2)
- 2016年12月(5)
- 2016年8月(2)
- 2016年7月(3)
- 2016年5月(1)
- 2016年4月(2)
- 2016年3月(4)
- 2016年2月(3)
- 2016年1月(1)
- 2015年11月(1)
- 2015年9月(1)
- 2015年8月(1)
- 2015年7月(1)
- 2015年6月(1)
- 2015年4月(1)
- 2015年3月(2)
- 2015年1月(3)
- 2014年9月(6)
- 2014年8月(3)
- 2014年6月(3)
- 2014年5月(3)
- 2014年4月(2)
- 2014年2月(2)
- 2014年1月(2)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(1)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(5)
- 2013年8月(2)
- 2013年7月(2)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(2)
- 2013年4月(3)
- 2013年3月(3)
- 2013年2月(2)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(2)
- 2012年11月(2)
- 2012年10月(1)
- 2012年9月(2)
- 2012年8月(2)
- 2012年7月(2)
- 2012年6月(2)
- 2012年5月(1)
- 2012年4月(2)
- 2012年2月(2)
- 2012年1月(3)
- 2011年12月(2)
- 2011年11月(3)
- 2011年10月(3)
- 2011年9月(8)
- 2011年8月(10)
- 2011年7月(8)
- 2011年6月(8)
- 2011年5月(10)
- 2011年4月(9)
- 2011年3月(9)